第166回国会 衆議院 本会議       2007年06月19日

○議長(河野洋平君) これより会議を開きます。
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 日程第一 議員内山晃君懲罰事犯の件
○議長(河野洋平君) 日程第一、議員内山晃君懲罰事犯の件を議題といたします。(退場する者あり)
 この際、内山晃君から、弁明をいたしたいとの申し出があります。これを許します。内山晃君。
    〔内山晃君登壇〕
○内山晃君 民主党の内山晃でございます。
 私は、ただいま議題となりました私の懲罰事犯につきまして、心からの怒りをもって、一身上の弁明を行うものであります。(拍手)
 昨日、私、内山晃に対する懲罰事犯について審議される懲罰委員会において、またもや議会制民主主義の根幹を揺るがす暴挙が行われました。
 横光克彦懲罰委員長が開催をしないと理事会で言ったにもかかわらず、与党は数の力によって横光委員長の不信任決議を強行し、引き続き、私に対する懲罰事犯についての審議を強行採決し、三十日の登院停止の処分を与党単独で議決したのであります。まさに、このような暴挙に新たな怒りをもって強く抗議するものであります。
 そもそも、私に係る懲罰事犯は、去る五月二十五日及び五月三十日の厚生労働委員会による与党の強行採決の暴挙に対する抗議としての行動であり、特に五月三十日の審議においては、わずか一日でつくった法案をたった四時間だけの審議で強行採決したことに対する抗議行動であります。
 今、国民全体が最も注目し、政治不信、年金不信を巻き起こしていることは、与党も先刻承知のことでありましょう。しかし、看板のかけかえ、焼け太りの社会保険庁の改革、器を変えるだけの改革で、国民のためにならない改革であります。次々に判明する社会保険庁の年金に関する問題点と政府の対応のまずさによって、国民の政府・与党に対する信頼は、下落する内閣支持率に反映をしています。
 私は、今回の懲罰事犯は、国民の暮らしと生活を守るべく、国民の不利益につながる法案審議の強行採決に対して抗議として行った行動であり、国民の皆様に恥じることは一つもないと考えております。
 今国会は特に、厚生労働委員会を初め、多くの委員会において与党の暴挙が目立ちます。六月十八日現在において、委員会の職権開催が四十七回、強行採決が十四回であります。消えた年金記録の数にも驚きますが、通常考えられない数字であります。
 厚生労働委員会において、新たな事実が次から次へと発覚し続けています。これまで社会保険庁が明らかにしていた五千万件のほかに、第二の年金記録漏れとして、大量の手書き台帳分千四百三十万件。時効により支給されなかった年金総額、五年間で九万人に千百五十五億円。サンプル調査における国民年金特殊台帳とコンピューターのデータの相違が三十五件。厚生年金基金加入者のデータと社会保険庁のデータとの相違等々がこれからたくさん出そうな状況であります。
 消えた年金記録問題は、本当にこれで打ちどめなのか、だれもが皆、まだあるのではと疑問を抱いています。まさに底なしの消えた年金記録問題と言うほかにありません。
 私たちは、これらの証拠隠滅、審議打ち切り、強行採決は、政府・与党が消えた年金記録問題にふたをして、逃げ切りを図ろうとするものと強く追及をしてまいりましたが、新たな消えた年金記録の発覚は、まさに私たちの指摘が正しかったことを証明したことになっているのではありませんか。
 国民は今、消えた年金問題に対し、政府・与党の対応に強く不信感を持ち、心の底から怒っています。
 現に、社会保険庁の二十四時間ねんきんあんしんダイヤルには、連日多くの問い合わせの電話がかかってきております。総着信件数は、十五日まで、百四十万件を突破したとの報道がございます。
 また、消えた年金記録騒動を引き起こした社会保険庁のでたらめ情報処理システムに、一九六七年度から、年金保険料など総額一兆四千億円もの巨費が投入されていたこともわかっています。
 さらに、これらシステム運用管理を委託する四社に、社会保険庁や旧厚生省のOB十五人が天下りをしていたことも判明をいたしました。
 このような重大な問題が長年にわたって放置された上に、政府・与党は、泥縄式、つけ焼き刃、さらには実効性のない無責任な対応に終始するばかりであります。
 百年安心と言って国民にアピールする年金の財政について、平成十六年度の収支状況で見ると、被保険者数が想定より下回り、年金保険料が六兆五千億円少ない二十兆二千億円しか集まりませんでした。厚生労働省年金局の資料では、平成十九年度の賃金上昇率は、二・五%の設定に対し、平均的サラリーマンの本年四月の賃金上昇率は何と約〇・二七%程度であります。設定よりマイナス二・二三%の減でありました。
 このままでいけば、予定をしている保険料収入が見込めず、百年安心の年金とはならず、早急に崩壊をしてしまいます。与党は百年もつと言ったんじゃないんですか。
 私たちが望むのは、年金制度の抜本改革です。消えた年金記録を初め、多くの年金問題をどうやって解決し、年金制度に対する国民の信頼を取り戻すかという純粋な政策論争であります。
 櫻田義孝厚生労働委員長は、我が党提出の年金信頼回復三法案を全く審議せず、五月二十五日及び三十日の二度にわたって問答無用の強行採決を行ったのであります。そして、さらに、我が党の柚木道義議員に対しても、国会内において脅迫行為に及ぶということが許されていいんでしょうか。
 審議を打ち切り、強行採決をすることは、いかに国民の年金制度を真剣に考えていない証拠であります。自公政権には、国民の年金制度をもはや任せておくことはできません。
 強行採決がなぜ許されるのですか。強行採決は数の暴力ではないんですか。国民は、きょうのことは見ています。必ずや、国民の声を無視した与党に対し、天罰が下されるものと確信をしています。
 今回の懲罰事犯に係る行為は、まさしく国民の暮らしを守るという国会議員としての行為であり、このことが懲罰行為と言うのであれば、国民の負託にこたえる行動が封殺されてしまう、議会制民主主義の危機であるということを強く申し上げて、私の一身上の弁明といたします。
 終わります。(拍手)
○議長(河野洋平君) 内山晃君の退席を求めます。
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○議長(河野洋平君) 委員長の報告を求めます。懲罰委員会理事島村宜伸君。
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    〔報告書は本号末尾に掲載〕
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    〔島村宜伸君登壇〕
○島村宜伸君 ただいま議題となりました議員内山晃君懲罰事犯の件につきまして、懲罰委員会における審査の経過並びに結果について御報告申し上げます。
 本件は、去る五月三十日の厚生労働委員会における法律案採決の際の内山晃君の行動に関して、谷畑孝君外五名から六月一日懲罰動議が提出され、同月八日の本会議において本動議が可決後、懲罰委員会に付託されたものであります。
 当委員会といたしましては、去る十五日、懲罰動議提出者鴨下一郎君から懲罰動議の趣旨説明を聴取し、昨十八日、本件につき懲罰事犯として懲罰を科すべきかどうか、及び懲罰を科するとすれば、国会法第百二十二条に規定するいずれの懲罰を科すべきかについて意見を求めましたところ、自由民主党及び公明党を代表して遠藤乙彦君から、内山晃君の行動は、議院の品位尊重に関する衆議院規則第二百十一条の規定に反し、議院の秩序を乱したものと考えられるとの理由により、本件は、これを懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により、三十日間の登院停止を命ずべしとの動議が提出されました。
 直ちに採決をいたしました結果、遠藤乙彦君の動議のごとく、本件は、これを懲罰事犯として、国会法第百二十二条第三号により、三十日間の登院停止を命ずべきものと決した次第であります。
 以上、御報告申し上げます。(拍手)
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○議長(河野洋平君) 討論の通告があります。これを許します。中川正春君。
    〔中川正春君登壇〕
○中川正春君 中川正春です。
 民主党・無所属クラブを代表して、万感の思いを込めて、反対討論を行います。(拍手)
 まず冒頭、今回の動議に対して、私は、これは間違ったプロセスだと疑義を表明したいというふうに思います。
 どうして島村理事が、委員長がちゃんといるにもかかわらず、ここに出てきて委員会報告をしなければならないのか。これについて議長のはっきりとした説明を求めていきたいと思いますし、私たちは納得できない、このことをまず冒頭、表明をしておきたいというふうに思います。
 すべて今回の問題のもとは何か。それは、与党の強引な国会運営。先ほどお話も出ましたように、今国会においては、委員長職権によって強引に立てられた委員会四十七件、審議を打ち切っての強行採決が十四件、強行採決に次ぐ強行採決、異常な状況がいまだ、まだこの時点でも続いているのであります。
 法律には抵触しないから、あるいは国会の手続には瑕疵がないから、多数決で何でもできる、こんな安っぽい理屈で国会が運営されるとすれば、それは、多数与党のおごりによって、日本の議会制民主主義が地に落ちてしまったんだと言うほかありません。
 近代の民主主義国家と言われる国々では、与野党が国民の意思を反映させながら議論を深め、成熟した政治プロセスの中で全体のコンセンサスをつくり出していく大人の政治を実現しております。与党自民党による一連の強行採決は、多数決イコール民主主義という誤った認識、子供のような認識、これを持って進めているわけでありまして、成熟した政治とは対極にある蛮行であります。
 なぜ与党がこのような強行採決を連発するかということには、実は理由があります。安倍政権のみずからの政策に対する信念の欠如や自信の持てない弱さが、逆に、権力をかさに着て、上から抑え込む姿勢に拍車をかけているのであります。安倍政権は、本当は政権基盤の維持に自信がないから、強行採決という手段で大見えを切って、政権の強さを演出しているという真実の姿がそこに透けて見えるのであります。
 さらに、委員会の場で長く議論することで、政府・与党にとって不利な情報が出てきたり、あるいは政策の矛盾をつかれると、いちずに逃げることだけを考えているこうした政権与党の姿は、実は、六カ国協議で返事に窮した北朝鮮がテーブルをひっくり返してその場から退場する姿とダブって見えてくるとの指摘があるように、安倍政権と与党は、国会での真正面の我々に対する議論から逃げているではありませんか。
 以上の点を前提にして、今回の内山晃君に対する三十日間の登院停止処分と、懲罰委員会での与党単独の強行採決という暴挙に対し、憤りを持って断固反対の立場で討論を進めます。
 まず、横光懲罰委員会委員長の不信任動議に断固抗議をします。委員長としては、事が議員の身分にかかわる問題であるだけに、慎重を期し、与野党間の話し合いを前提にした結論を導こうと十分に努力をされていたのであります。しかし、与党は、与野党間に話し合いを促す委員長の努力を踏みにじり、不信任動議を強引に単独で可決した上、こそくにも島村委員長代理によって一気呵成に懲罰動議まで可決をしました。暴挙であります。本会議ではなく、しかも与党単独というこそくな不信任動議は、解任の理由に正当性がないことのあかしであります。このような憲政上例を見ないひきょうな暴挙には、満身の怒りを込めて抗議をいたします。
 そもそも、去る五月三十日、いわゆる年金時効撤廃特例法案が与党によって強引に提出されたときから、異常な状況は始まっています。年金問題の根本的な解決にはならず、場当たり的だ、問題のすりかえだと国民から批判を受けた法案だけに、与党はとんでもない日程を強引に進めようとしたのであります。法案提出をしたその日に、議院運営委員会で強行採決して厚生労働委員会に付託。その厚生労働委員会での審議は、たった一日。数に物を言わせて、わずか四時間の審議で、ここでも与党は強行採決に踏み切りました。
 消えた年金五千万件、新たに千四百三十万件が追加をされました。審議の過程で次々と出てくる社会保険庁の目も当てられないようなずさんな管理実態。柳澤大臣の事実説明が後手に回り、その対策も場当たり的、つけ焼き刃となれば、国民の信頼も崩れ、その不安はますます大きなものになっていかざるを得ない状況となっているのであります。
 今回の強行採決に安倍総理の指示があったとすれば、それは、政府・与党の浮き足立った対応が事態の混乱にさらに拍車をかけたことにしかならない。こんなときこそ、総理たるもの、本当は落ちついて、議論を年金制度の根源に戻すべきなのであります。国民の不安を解消するための根本的な年金制度の改革論議をここですべきなのであります。それを、社会保険庁の解体や時効年限の廃止など目先のごまかしですり抜けようとするから、国民の不安がさらに大きなものになる。内山君たちの行為の背景には、こうしたごまかしを断じて許さないという強い思いで国民の負託にこたえようとした大義があります。やむにやまれぬ行動であったことをここでみんなが理解すべきであります。年金を返せ、私の年金はどうなっているのか、ちゃんと説明が欲しい、このような国民の声に、政府はいまだ納得のいく説明をしていないではありませんか。
 最後に、参議院選挙を間近に控えて、それぞれの党が自分の立場を国民にプレーアップすることに余念がない状況があります。アピール合戦であります。政策についての勝ち負け、委員会での議論の中身の勝ち負けを競うことは大事であります。大いに闘わせ、国民に審判を仰ぐことが、我々政治家や国会に対する信頼を増していくことにつながります。
 しかし、国会運営は、これはまた違います。強行採決を常套手段化し、見せしめのための懲罰を出してくるなど、与党自民党は常軌を逸しております。このような国対ベースの勝ち負けの勝負は、それをすればするほど泥仕合になり、結果的には、我々自身が国民から見放されてしまうということに、しっかりと目を、心を向けるべきであります。
 今回の内山君に対する一連の措置が、与党国対によって、ただ一時の感情に走った仕返しの連鎖から出てきたものであるとすれば、まことに情けない、次元の低い話だと憤りを禁じ得ません。そうした思いも込めて、今回の内山君に対する措置に断固反対をし、成熟した民主主義の復権を心から求めます。
 最後に、今回のこの不当な動議に対して、私たちは採決に参加をしない、憤りを持って、退席して抗議をすることを明言して、私の討論を終わります。(拍手)
○議長(河野洋平君) これにて討論は終局いたしました。(退場する者あり)
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○議長(河野洋平君) 本件につき採決いたします。
 議員内山晃君懲罰事犯の件の委員長報告に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
○議長(河野洋平君) 起立多数。よって、議員内山晃君懲罰事犯の件は委員長報告のとおり議決いたしました。
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○議長(河野洋平君) 内山晃君の入場を許します。
 ただいまの議決に基づき、議員内山晃君に対し懲罰を宣告いたします。
  平成十九年五月三十日の厚生労働委員室にお ける議員内山晃君の行動は不穏当なものと認め、 同君に対し、国会法第百二十二条第三号により、 三十日間の登院停止を命ずる。